夕立ちと少女と小さなお願い

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心臓が、ビクリと跳ねた。 祭壇、というのだったか。存在は知っていたけれど、実際に目にするのは初めてだ。 階段みたいになった台の上に白い布がかけられ、色とりどりの花や果物、お菓子が置かれ、一番上の段には遺影と呼ばれる写真が二枚。 (……何、これ) その写真のうちの一枚は、ほんの数分前まで一緒にいた、自分のこの右手を掴んでいたはずの女の子が写っている。 「……うちの娘たちです。三週間ほど前に、交通事故に遭いまして……」 「……」 話を聞くと、この姉妹は双子らしく三週間前の夕方、学校から帰る途中で事故に遭い亡くなったのだという。 葬儀も滞りなく終わり、今はこうしてそれぞれ白い小さな箱の中に収められていると言うのだが。 「この人形は、妹の佳苗(かなえ)の物です。姉の早苗(さなえ)と色違いのお揃いでして、いつも大事に持ち歩いてたんですけれど。事故依頼見当たらなくてどうしたんだろうと思っていたのですが……。きっと、跳ね飛ばされた際に落として、それが流されていたんでしょうね」
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