夕立ちと少女と小さなお願い

21/24
前へ
/24ページ
次へ
大切な人形を取り戻したくて、あの日からずっと探していたのかも……。 最後にそう言って汚れた人形を優しく撫でると、祭壇に飾られた花のすぐ脇、姉妹の物だろう、黄色いうさぎの人形が置かれた隣へそっと並べた。 そうして、もう一度撫でるように優しく触れ、母親だけが作り出せるあの子供へ向けるときの優しい笑顔を浮かべると、 「……おかえり」 と、呟くように囁いた。 そんな姿を何も言えずに見つめながら、あたしはただ呆然と祭壇の側に座り込んでいることしかできなかった。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加