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それから、濡れた服を乾かしてもらう間にお茶と羊羹をご馳走になりつつ、佳苗ちゃん姉妹の生きていた頃の話を聞かせてもらったあたしは、外が暗くなったのを理由に家路へつくこととなった。
「今日は本当にありがとうございました。あなたのおかげで、娘も家に戻れたと思います」
「いえ、お役に立てたのなら嬉しいです」
そんな挨拶を玄関先で交わし、あたしは外灯の灯る静かな路地を歩きだす。
何とも、不思議な体験をしてしまったな。
そんな言葉に変換できない気分を味わいながら十数メートルも進んだとき。
"――おねえちゃん、ありがと!"
「――っ!」
不意に、背後から女の子の声が聞こえたような気がして、慌てて足を止め振り向いた。
だけどもそこには誰もおらず、見送っていたお母さんだけが、どうかしたんだろうかと言いたげに小首を傾げてこちらを見ているだけだった。
だけど――
(あ……?)
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