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地面に叩きつけられる雨粒が跳ねまわり、納涼効果のあるBGMを奏でる。
雨雲でどす黒く染まった上空では頻繁に雷光が暴れ回り、ちょっとしたスリルと言うか高揚感を与えてきた。
ゲリラ豪雨と呼びたくなるくらいの、強い雨。
まるで水の壁が張られたかのように視界は劣悪になり、十メートルも先はもうよく見えていない状態になっていた。
流れる雨水が足元まで侵食し、靴を濡らし始める。
(やばいなぁ……。これ、すぐには止まないかも)
さっさと帰ってシャワーを浴びたい。
そんな願望を必死に堪えながら顎を下げ、あたしは真正面に顔の向きを変える。
狭い道路を挟んだ向かい側に、昔は小さな平屋が建っていた記憶のある空き地が広がっていた。
もうずっと前から売地の看板が立てられ放置されたその空き地に、
「……ん?」
あたしは誰かが立っているような気がして、反射的に目を細め前傾姿勢を作った。
こんな豪雨の中、雨宿りもせずに空き地に立つ人なんて普通いるだろうか。
(気のせい……じゃないよね。何かの看板?)
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