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これでも反応を示さないなら、確実に無視されてるって判断しても良い。
そう自信を持って断言できるくらいには、大きな声を出した。
「…………」
きっかり五秒、少女の反応を見つめる。
だけれども、微動だにしない。
これはやはり無視か。恐らく、かなりの人見知りか生意気な子供かのどちらかだ。
そう結論を下しながら鼻でため息をつき、関わるのをやめようとした瞬間。
「――!」
突然、立ち止まっていた少女の足が動いた。
再びフラフラとした足取りで歩き出したかと思うと、そのまま真っ直ぐにあたしの元へと向かってくる。
(聞こえてんじゃん……)
大粒の雨が打ち付ける中、急ぐ様子もなく側まで来た少女は無言であたしの横にピタリとくっ付く。
顔はまだ見ていない。俯いているせいで長い黒髪が垂れ下がり、カーテンみたいに表情を隠してしまっている。
これがもし夜だったら、不気味な幽霊と勘違いしてもおかしくはないと断言できるくらいの存在感だ。
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