夕立ちと少女と小さなお願い

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だけど、横に立つ少女は一向に喋り出す気配を見せぬまま、ただ無意味に時間だけが浪費されていった。 必死に話題や質問を考え吐き出すも、全て無言で弾き返されるのみで手応えもなく、頑張って和やかな雰囲気を作ろうと試みるあたしの士気は徐々に空気の抜けた風船状態へと変化していく。 やがて。 雨のせいなのかたまたまなのか、目の前の道路を通る人は一人も現れず、何だか見知らぬ少女と無人の町に迷い込んだような錯覚さえ覚え始めた頃。 やっと、雨脚が弱まり始め大粒だった雨が小さなサイズへと縮小しだしてくれた。 「……あ、明るくなってきたし、そろそろ雨も止みそうだね。服、びしょ濡れになっちゃってるからすぐにお家に帰らないと駄目だよ? そのまま遊んでたりなんかしたら、いくら夏でも絶対に風邪引いたりお腹壊したりしちゃうんだからね」 ここまでくれば、もうゴールは目の前。 約二十分近くに及んだ沈黙タイムが終わりに近づいたことを確信したあたしの心に、ようやく安堵と余裕がにじみ出てきた。
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