廃墟マニア

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廃墟マニア

 友人に廃墟マニアがいる。  潰れた病院や、もう誰も住んでない家屋に忍び込み、中を探検するらしい。  何が楽しいのかは知らないけれど、趣味は人それぞれということで、特に思うことはなかった。  その友人から、ある日一件のメールが入った。見れば、引越しをしたという。  どこに越したのか尋ねたら、住所だけが返された。その後は、メールもラインも通話もできない。  だから放置していたが、学校で見かけることもなくなかって、時間ができたある日、新居を訪ねてみることにした。  …訪ねた先にあったのは、アパートでもマンションでもなく、いかにも永い間放置されているといった風情の廃病院だった。  引越し先がこんな場所の筈がない。メールの住所が間違っていたか、メール自体がイタズラなのだろう。  わざわざ来て損をした。そんな気分で帰ろうとした時、背中に声がかけられた。  中に入れよ  それは確かに友人の声だった。けれど辺りを見回しても、友人の姿はどこにもない。  空耳かと思い、今度こそ帰ろうとした時に、また、背中に声が響いた。  中に入って来いって  声の方を振り向いたが、そこにあるのは古ぼけた廃病院だけだった。ただ、さっきは気づかなかったけれど、ほんのちょっと玄関の扉が空いている。  その、隙間に……。
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