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ふと誰かの視線を感じて道路脇に植えられた木に目を向けた。風もないのに葉擦れの音がするとは不気味じゃないか。恭弥は葉の茂る枝を見遣り、鼓動が早まるのを感じた。それでも怪しげな木から目を離せなかった。それどころか近づいていく。
今、何かが動かなかっただろうか。
目を凝らしてみつめるとやはり蠢くものがあった。いったいなんだろうと数歩近づいて顔を顰めた。
ごくりと喉を鳴らして唾を呑み込むと、もう一歩踏み出す。その矢先、一斉に羽ばたく音が耳を衝き眼前を黒い影が埋め尽くしていった。
やめろ、やめろ。
いくら払い除けようとしてもその影が取り除かれることはない。
いったい何が起きている。
こいつらはなんだ。
バサバサバサとの羽音を響かせて頭上から足元から背中側から前からと迫ってくる。鳥だ、鳥の大群だ。
ダメだ、埒が明かない。
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