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現状から抜け出したい一心で恭弥は、視界を阻まれたまま喚き散らしながら駆け出した。
その瞬間、鳥たちが消え去り一気に視界が開けた。その視界の先には二つの眩しい光りが照らしつけてくる。しかも向かってくる。手を翳して立ち尽くす恭弥の耳にクラクションが鳴り響く。
ここは車道だ。気づくのが遅すぎた。
嫌な鈍い音を耳で捉えたとたん激痛とともに身体がふわりと空を舞う。
なぜだろう。やけにスローモーションに感じる。これって、もしかして交通事故ってやつか。だとしたら、死ぬのか。なんだか痛みがどこかへ飛んでいってしまったようだ。痛すぎて感覚が麻痺してしまったのかもしれない。それにしても、なぜこんなにも冷静なのだろう。
ああ、星空が綺麗だ。
わけもなくそんな思いに囚われて、目を閉じた。瞼の裏に絵美里の顔がふと浮かぶ。彼女の笑顔、楽し気な弾んだ声、不貞腐れた顔まで浮かんできた。
死に逝くんだ、きっと。なんで、どうして、こんなことになってしまったのだろう。
ふと耳元にさっきの羽音が蘇る。
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