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「お主は生き返りたいのか」
突然、背後から重々しい声音が圧し掛かってきた。振り返ると、そこには鼻がやけに大きな赤ら顔の祖父さんがいた。酔っ払いかとも思ったが、そんなはずはない。自分と同じように浮き上がっている。
恭弥は眉間に皺を寄せて一瞥をくれてやった。
「ふん、怪しい者ではない。いや、十分怪しいか。わしは天狗のハグンだ。よろしく頼むぞ」
よろしくと言われても、どうしていいものかわからない。天狗なんて空想の存在じゃなかったのか。もしかして、天狗があの世へ連れて行ってくれるのか。いや、行きたくはない。
「えっと、ハグンでしたっけ」
頷くハグン。
「その俺は死にたくはない。もしも、あの世に連れて行こうとしているなら帰ってくれ」
恭弥の言葉にハグンは大口を開けて笑い始めた。笑い声の大きさに思わず耳を塞いでしまった。
「すまぬ。おかしなことを口にするお主が悪いのだぞ。わしはお主の願いを聞いてやろうかと来たまでだ。わしの手下共が無礼をした償いとしてな」
どういうことだ。手下共の無礼? 償い?
恭弥は首を傾げて「なんのことだ」と問うた。
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