「おかえり」

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それは、麻子の息子・麻也(アサヤ)が自転車で、近所のスーパーにアイスを買いに行き、三十分が経った時のことだった。 去年病気で他界した、嫁のアヤと麻也との間に産まれたふたりの孫たちと、リビングで三人で過ごしていた。 麻子は、回転が遅くなった脳内を、必死にかけめぐらせていた。 どうしよう。 早く銀行に行って、お金をおろして振り込まないと、手術ができないのかもしれない。 あの子が助かるものも、助からないのかもしれない。 でも、孫たちにはなんと伝えよう。 パパが事故に遭って、けがをしていると…だからお金を振り込まないとならないと…だから出かけてくると…
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