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それは幼い私が近所のホームパーティーに出かけた時のこと、道端に一体の物乞いが寝ていた。
独特の臭気を放った浅黒い肌のそれは寝息も立てずに人形のように横たわっていた。
傍にあった酒の入ったボトルからして彼は眠っているものとばかり思っていた。
パーティーが終わり、行きと同じ道を戻る途中に人だかりができていた。
数人のポリスが道端にロープを張って、その中を調べる。
人の間を掻い潜ってそこを覗けば、そこにいたのは先程見た物乞いだった。
耳から入ってきたのはその物乞いが酒を飲んで眠ってしまい、凍死したという野次馬の声だった。
それを聞いた瞬間に私の鼓動は早くなり、頭の先からつま先が揺り起こされるような妙な快感を覚えた。
まるで〝解剖台の上の、ミシンと蝙蝠傘の偶然の出会いのような奇妙な美しさ〟(※beautiful as the chance meeting on a dissecting-table of a sewing-machine and an umbrella)のように、その事実は私の心を突き動かし、そして解放した。
それがすべての始まりだった。
見慣れた景色に異な物が合わさると、単純で味気ない日常でさえも刺激に変わる。
それと同じように思いがけない死に遭遇した時、それは深く美しいものに変化するのだ。
肉体が腐っていく様をきっと私は喜ぶ。
血の臭いにさえ身体は反応する。
それが、自分が必死に身悶える姿であってもとても魅力的なのだ。
流れる血、速くなる鼓動、痛み、死への恐怖、あらゆる感覚が研ぎ澄まされると同時に脳は快楽へと直走る。
それが、人間が持つ生の性癖だと知りながら人類はそれを撲滅しようと懸命に決まり事を定める。
これが、人間の本性だと分かり切っていて、それを認めない世界が私をも撲滅しようとするのだ。
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