第1章

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土曜日の夕方、繁華街に程近い駅前。 「この子を見かけませんでしたか?」 私は、差し出したチラシを受け取ってくれた男性に頭を下げる。 チラシには、高校の入学式に写された女の子の顔写真と、探している旨を書いた文章が載っていた。 チラシの最後の1枚を配り終え、女の子が無事に帰宅する事を信じている、彼女の両親や友人、警察官達が集まっている所に歩み寄る。 「先生ありがとうございます」 彼女の母親が私に頭を下げ礼を言う。 「頭を上げてください。 中学の2年と3年の2年間、受け持っていた生徒が行方不明なのです。 他人事ではありません」 「ありがとうございます」 母親がまた頭を下げた。 「私はこれで失礼します」 母親や彼女の家族に頭を下げてから、チラシ配りを手伝っていた3月まで受け持っていた、元生徒達に声をかける。 「今日はありがとう。 君達も気を付けて帰りなさい」 元生徒達の返事を背に受けながら、私はその場を後にした。
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