そばにいて

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「しかし、お互いの仕事の合間に打ち合わせるのも大変だよな」 時刻は、23時になろうとしていた。 「ごめん。そろそろ…」 「デザートは、いいのかい」 「うん。明日研修で、6時起きだから」 「わかった。じゃあ俺が適当に書いて送っておくよ。プランナーには、明日俺から説明しとく」 「悪い。いつも任せちゃって。じゃね」 胡桃(くるみ)は、バッグを肩に掛けると、足早に出ていった。膝丈のスカートが揺れていた。 僕はその後ろ姿を見つめながら、ため息をついた。 (俺たち、本当に結婚できるのかなぁ) ゆっくりと口にコーヒーの運んだ。すっかり冷めてしまって、苦味が増したように感じた。 胡桃(くるみ)に、『ココアトーク』を勧めたのはこの頃だった。 彼女がガラケーからスマホに機種変した際に、僕からの提案だった。 「ココア?なにそれ。知らない」 「スマホのアプリケーションにあるんだよ」 ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)は、簡単に言うと、人と人の繋がり(会話など)をネットワークで共有することの出来るサービスだ。なかでも、『ココアトーク』は、ドメスティックな空間(トークノート)に、文字を残すことが出来るため、電話のように会話をすることも出来るし、時間に縛られず、好きなときに見ることも出来る。 「うん、説明はいいからさ。それで打ち合わせが楽になるなら、私も登録しといてくれる」 「もちろん。アカウントやパスワードは?どうする?」 「適当でいいよ。そういう面倒臭いことは、全部やっといて」 「そうかい、そうかい。胡桃らしいですな」 僕は苦笑して、適当にアカウントとパスワードを登録した。パスワードは僕の社員番号を並べ替えたものにした。僕以外は絶対に分からない組み合わせだ。
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