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君の作る弁当。
仕切りのある一箱のものに、半分ご飯、半分おかず。
ごま塩ふって、梅干しが真ん中にちょこん。
レタスを敷いてから揚げがドン、ニンジンとササギのごま和えがポン。
小魚の甘辛い佃煮がそそそっとあって、彩りにミニトマトがぽつん。
買い置きしたもの、手作りのもの、冷凍食品も織り交ぜて。
同じものが二日続く事だってある。
文句なんかあるもんか、ありがたい弁当だ。
毎日、毎日早起きして、せっせとおかずを詰める君の背中に、声に出さずに「ありがとう」を言う。
……でもミニトマト、嫌いだ。
これは言えないけど。
さっき、家に帰ったら風呂といったが、間違った。
まずはカラの弁当箱を君に渡すんだ。
「ごちそうさま」と言って。
"いつもありがとう"のかわりに。
君は「はいはい」と受け取り、台所に持っていく。「お風呂沸いてますよー」と言いながら。
さて、もう玄関まで来てしまった。
扉の前に立つとセンサーで明かりがつく。
鞄から取り出した鍵で開け、やっと帰宅だ。
「ただいま」
扉を閉めても、返事がない。
おかしいな、ほらいつもなら……。
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