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客の一人にすぎない。
昔愛した男だと思うからやりきれないと思うだけで、
何でもない。いつもの一日にすぎない。
実際に同級生が客だったこともある。
声を少し変えて相手した。
部屋が薄暗かった事や、客は相手が誰でも関係ないというものあるのだろう、バレなかった。
彼が帰ってから二人の客を相手した。
戻る途中、電車の窓に向かって、やりきれない涙を流していた。
泣かなかった自分はもうどこかに行ってしまった。
毎日のように涙が出てしまう。
少し熱っぽいのも頭がガンガンするのも、母が死んでから。
悲しんだ時間は少しだけだったからなのか、ずっと引きずっている。
『こんな所でこんな酷い仕事。』
自分では受け入れている現実を、そんな風に言われたこと。
彼だけには知られたくなかったのに、
その上、ソープ嬢として、それにふさわしい酷い扱いをされて、
心は乱れていた。
嵐の中のように進む方向さえ見えなくなった気がした。
ここしか私の生きる場所がないと言い聞かせていたのに・・・
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