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一体、どれくらいの時間が過ぎたのだろうか?
彼がいなくなってしまったのなら、この部屋は出ていくべきなんだろうか。
二人の思い出が詰まったこの部屋に私一人で住むなんて、無理だ。
部屋の解約手続きってどうすればいいんだっけ……?
そんな暗い気持ちを引きずったまま、ボーっとしていた私の耳に玄関のドアが開く音が聞こえた。
弾かれたように体が玄関へと向かう。
目の前には出て行ったはずの彼の姿。
「………おっおっ、おかえりな、さい」
「ただいま」
さっきケンカしたのが嘘のように笑顔で部屋に戻ってきた彼。
私の頭は混乱していて、夢でも見ているんじゃないかと頭をコンコンと叩いてみた。
「痛いっ、夢じゃないんだ」
「なに寝ぼけてるの?ほら、限定スイーツ二人分買ってきたから食べようぜ!」
「もう、ここには帰ってこないのかと思ってた……」
「大袈裟だな、コンビニ行ってただけだよ」
心の中でもう一度『おかえり』と言った。
もう、ケンカもほどほどにしないとなって反省しながら。
END
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