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「やれ、ば、できる……じゃねぇか……」
「……ライオネル?意識が…………え、魔王の気配が薄い……まさか!最初から僕に殺されるためにやったのか!」
俺様の右腕は、イズモに触れる直前に残った力で自ら吹き飛ばした。そこに転がっている。そしてイズモの長剣はしっかり、俺様の心臓を刺し貫いている。
上手くいった。ヒヤヒヤしたぜ、まったく。
魔王はまだ俺様の中にいる。弱ってはいるが、左手で襲いかかろうとしたのでこっちも吹き飛ばした。もう、イズモを抱きしめてやることはできねぇ。
ボロボロと大粒の涙をこぼし体を震わせ、長剣から手を離してしがみつく。
こうでもしねぇとてめぇ、俺様を本気で殺してくれねぇだろうが。そう言おうとしても、声が出ない。「わりぃ、な」と苦笑することしかできない。
きっとイズモはドラゴンと、俺様――魔王を討った英雄として称えられるんだろう。正しいことをしたんだ、胸を張れよ。
「イズモ……いや……勇者様よぉ…………今度から、は、ゴホッ!すぐに殺して……ゴホッゴホッ!やれ、よ……」
そこにいるんだろ、イズモの中の勇者様よぉ。お互いに苦しまねぇよう、生まれたらすぐに殺せよ。迷惑だからさ、約束だぜ。
なんとなく、イズモじゃねぇ声で「わかった」と聞こえた気がした。
「それから、イズモ。俺様……あと追って、死ぬな、よ。てめ……イズ、だ。てめぇらし、く…………生きろ」
あぁ、上手く言えねぇ。コイツの性格上、死のうとする確率は極めて高い。アホか。てめぇの中には勇者様がいるがイズモだ。てめぇらしく生きろ。そう言いたかった。
何か叫んでんのか?悪いな。もう何も聞こえねぇし、何も見えねぇんだ。
もう死ぬ。俺様の死を喜ぶ人は大勢いる。けどな、怖いんだ。イズモだけが俺様を親友だって言ってくれたから。俺様もそう思っちまったんだよ。
だから、死ぬのが怖い。俺様達がタダの人間だったらよかったのにと後悔する。悔しくてさ、涙が出るんだよ。情けねぇ。
終わりだ、今回はな。勇者と魔王の連鎖は終わらない。呪いだな。
双方引き分けで、もう2度と生まれ変わってくんな。それが最善だ。
わかったか、クソ魔王?
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