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鳥の会話
学校の野外授業。今はグループごとの自由研究時間だ。
ウチの班は食べられる野草の採取だそうだが、俺は個人的に、木陰での寝心地検証をしている。
虫よけスプレーをたっぷりかけて、涼しい木陰で一休み。
そのつもりだったんだが。
枝の合間から鳥の鳴き声が聞こえてくる。そこまでは想定範囲内だったが、鳥の声だと判っているのに、それが人の言葉として聞こえてきたから驚いた。
『あっちの草むら、蛇がいるよ。毒はない蛇だけど、食べられちゃうから近寄っちゃダメだよ』
『向うの藪には蜂の巣があるよ。近寄ったら刺されちゃうね』
『今、人間が草を摘んでる。危険な物ばっかりだけどどうするのかな?』
飛び起きて、班の連中のみならず、そこいらにいるクラスメイトや他のクラスの奴にまで注意を喚起して回った。
以来、俺の扱いは、悪ぶってるけどとっても気のつく優しい人、だ。
評価はありがたいんだが、サボれなくなったのはちょっと辛いところだな。
…しかし、あの時の鳥の会話は何だったのだろう。
今はもう、どんなに耳を傾けても、鳥の鳴き声は鳥の鳴き声にしか聞こえないんだが…。
まあ、あれこれ被害が出なかったから、不思議な現象として胸一つに留めている。
鳥の会話…完
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