1人が本棚に入れています
本棚に追加
女子バレー部に所属していた田中さんと男子バレー部に所属していた僕。接点はそれだけ。一度も同じクラスにはならなかった。それに同じバレー部とはいえ男子と女子が練習を一緒にするわけではないし、顧問も各々いたので関わりもほとんどなかった。
それなのに僕はどうしようもないくらい田中さんが好きだった。そして僕はどうしようもない変態だった。
あの日、僕は朝から喉が痛くて病院に行った。原因はクーラーによる夏風邪。でも熱があるわけでもなく、薬を貰ってそのまま登校した。
学校は2時間目の真っ最中で、僕のクラスは隣のクラスと合同体育をしていた。田中さんのクラスだ。僕は急いでジャージに着替える。なぜなら今日は水泳だから。田中さんの水着!それしか頭になかった。
僕らの通っていた高校はだいぶ古くて、プールは校舎の裏にあった。そしてボロい。それでも一応、外から覗けないようにプールはトタンで目隠ししてある。そもそもプールのある校舎裏の路地はだいぶ細くて、人通りもほとんどない。そしてプールに入るには、更衣室を通らないといけない。右が女子で左が男子。入り口はカーテンが掛かっているだけだ。
ゴクリ、喉が鳴る。
全神経を集中する。まだ授業中だ、プールの方から賑やかな声がしている。こんな場所にあるから僕は誰にも見られていない。気配を消して、更衣室の様子を伺う。人はいなさそうだ。
やめろ!やめろ!もう一人の僕が頭の中で必死に止める。
でも僕はそっとカーテンをくぐってしまった。入り口はカーテンなのに、プールに続く方の出入り口はアルミ製の扉だ。だからあちらから更衣室は全く見えない。 そうして僕は、田中さんのプールバッグを見つけてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!