たったひとり #2

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シンクンの身体は、実家が団地の為、団地の敷地内にある集会所まで運ばれた。 病院から呼ばれた葬儀屋が一緒に集会所まで来て、おじさんとおばさんに葬儀の費用等…祭壇、お花色々説明をしていた。 アタシは布団の上で眠り続けるシンクンのそばで座る。 シンクンの顔の上にのせられていたガーゼを払いのける。 …本当に逝ったの?… 寝てるようにしか見えない…。 そうゆう風にしか見たくないのかな…。 シンクンの手を握る。 少しだけ冷たいシンクンの手。 アタシは手でさすった。 あったかくなるまでさすり続けた。 寒そうだったから…だからアタシは手を温め続けた。 …もうこの手で抱きしめてもらえない。 シンクンとアパートで過ごした日々。 初めて愛し合った日。 初めてバイトで出会った時の事。 初めて友達になった日。 病院に連れて行ってくれた日。 バイクに乗りながら抱きしめてくれた日。 プロポーズしてくれた夜…。 全てが頭の中で映画みたいに流れ続けた。 …アタシ、シンクン以外の人のとこには絶対…お嫁に行かないから。 …だから少しだけ待っててね。 アタシは心の中でシンクンに語り続けた。
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