選択 #2

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アタシは下着を取り、診察台に上がる。 昔は、怖くて仕方なかった診察台。 でも、毎月性病検査に行ってたから… いつしか…怖さもなくなり、器具を入れられるのも… カチャカチャ…と冷たく響く金属音も、怖く感じなくなってた。 診察台に上がると、両足を開けられ、台が先生の目線まで上昇する。 …どうせ…見たって… アタシはもう諦めてた。 現に、何1つアタシが愛したものはアタシに残らず… みんな離れて行ったから…。 冷たい器具がアタシの中に入り、アタシの右側にあるモニターに内部が写し出される。 【出血が酷いですね…】 医師が言葉を詰まらせながらアタシに言った。 …どうせダメなんでしょ?… アタシは医師に、返事せず黙ったまま、 ただ… モニターを見つめ続ける。 【赤ちゃん…これですが…分かりますか?】 モニターの中で小さな矢印が動いていて、 1つの…小さな… 小さな“命”をマークしながら教えてくれる。 …赤ちゃん…。 そこに写っていたのは、人の形なんかしてない。 ただの黒い丸。 でも、存在を知ったその日から、 愛しくて… 仕方なかった… アタシと岩崎クンが愛し合った証が、 そこに、 ハッキリ写っていて。 …アタシがお母さんなのは…嫌だ?… アタシは、 涙を止めれなくて…流し続けたまま、 モニターに写る…赤ちゃんに、話しかけていた。
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