選択 #2

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【岩下サン…?】 先生がアタシを呼ぶ。 多分…ボーッとしすぎてたんだと思う。 先生が話す事に、返事も… 相づちも何もうたず… アタシは、マネキンみたいに、ただ座ってた。 【岩下サン…?】 …なに?… アタシはカルテに向いてた視線を先生の目線まで上げる。 【入院を、お勧めしますが…どうしますか?】 …入院…? 入院なんかまず無理…。 仕事休めないし… 入院なんかしたら、嫌でも岩崎クンの耳に入る。 入院してるのが産婦人科…ってバレたら… 何を思われるか分からない…。 …でも入院して赤ちゃんが助かるなら… アタシの心の中で、2つの選択肢がぶつかりあう。 …助かるなら… 【入院したら赤ちゃんは…なんとか大丈夫なんですか…?】 …助かるなら入院しよう… そう考えたアタシはまた、期待しながら先生に聞く。 すると、 先生は眉間にシワを寄せこういった。 【なんとも言えませんが…出血が多すぎるので今回は多分…】 …どっちみちダメなんでしょ…? また、アタシの期待が壊される。 【もう…いいです…】 アタシは先生にそう言って席を立った。 【赤ちゃんの成長を促す…ホルモン注射だけでも…赤ちゃんの為に…】 …赤ちゃんの…為… まだ見ぬ赤ちゃんに愛情を持ってしまったアタシ。 もうダメだ…と分かりながらも注射を受けてしまう。 【家では安静に…極力動かないように…そして血の塊がもし…出てしまったら…すぐ病院に来て下さい…】 先生はアタシにそう言いながら、アタシの左肩に注射した。
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