21人が本棚に入れています
本棚に追加
「えっと、あたしの秘密はですね…」
少し俯き加減のあたしはゆっくりと視線だけを上げて、小さな声で呟く。
神妙な面持ちであたしはその場にいる全員の顔を一人一人見渡す。
期待に目を輝かせる人、固唾を飲んで見守る人。
微笑ましそうに笑う人、目ヂカラが凄まじい人…
色んな顔があたしの『秘密』を待っていた。
あたしは目を閉じて深呼吸をすると、ゆっくりと顔を上げ、静かに口を開いた。
「最近知ったんですが、私の父は元スパイだったんです」
目力と語気を強めて息巻くようにそうカミングアウトすると、周囲から「へぇー」とか「ほぉー」とか感嘆の声が上がった。
…よかった。いい反応貰えた。
内心ホッとしていると、興奮気味に身を乗り出す人がいた。
「お父さんCIAとか!?それともMI6!?」
「ふふふ、それは秘密なんです」
私は悪戯な笑みを浮かべ、ぽぽあってぃさんにそう答えると「なるほど!秘密の中の秘密ってワケですね!」なんて感心する。
「実は次、スパイ物の作品書こうと思ってるんだよね!良かったら知ってること、教えて欲しいな!」
「私の知ってることなら是非お教えしますよー」
嬉しそうなぽぽあってぃさん。
…でも、ごめんなさい。
だってこれは『スパイ映画』で得た知識と適当な設定ででっちあげた『嘘の秘密』なんです…
私はちょっぴり後ろめたさを感じながらも、その場を乗り切れたことに安堵し、彼からの質問をかわすように答えていった。
最初のコメントを投稿しよう!