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「ご主人さま。1つだけ私の願いを聞いて頂いても宜しいでしょうか?」  上目遣いの不安気な眼差しでスピカは尋ねる。 「ああ。どうした急に」 「ご主人さまさえよければ、1つだけ約束して下さい。仮にこの先……ご主人さまが元の世界に戻ることがありましたら……そのときは私も一緒に連れていって頂ける……と」 「……別に構わないが、お前はそれで良いのか? スピカが俺の世界で暮らすとなると……色々と苦労すると思うぞ」  頭から犬耳が生えた少女が現代日本で生活をする。  具体的にそれが……どの程度の苦労を背負うことになるのかは定かではないが、様々な面で不自由な目にあわせてしまうことは間違いがないだろう。 「はい。どんな辛い目に遭おうとも構いません。元より……ご主人さまの奴隷になると心に決めたときから覚悟は出来ているつもりです」  スピカの言葉が決して誇張ではないことは、彼女の真剣な眼差しから推し量ることが出来た。 「ああ。分かったよ。お前がそうしたいなら自由にすれば良い。約束する。元の世界に帰るときはスピカも一緒だ」  スピカの頭を撫でながらも悠斗は返事をする。  悠斗の言葉を聞いたスピカは、パァッと花の咲いたような笑みを浮かべる。 「はい! ありがとうございます! 私は何処までもご主人さまにお仕えさせて頂きます!」  そのとき悠斗の脳裏を過ったのは、現代日本の人里離れた片田舎でスピカと二人暮らしをしている光景であった。  悠斗は思う。  トライワイドで大量の金貨を獲得した後――。  それらを日本に持ち帰ってスローライフ……というのも案外悪いものではないかもしれない。 (……まあ、どっちの世界で暮らすか考えるのは、元の世界に帰るという選択肢を手に入れてからでも遅くはないよな)  悠斗はそう心に決めた後、深い眠りに入るのであった。
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