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『ベジタリアンになりたい』吸血鬼は子どもの頃、よく七夕の短冊にそう書いた。
事情をよく知らない周囲の大人たちは、小さい子どもが突然そんな事を言い出すものだから、おかしそうに笑ったり、怪訝な顔をする者もいた。そもそも、その小さい子どもが自分たちの血肉を貪る恐ろしい化け物だとは夢にも思っていなかっただろう。
人間も知っての通り、吸血鬼は他の生き物の血液を栄養源として生きている。
なかでも人間の血液は特別で、あらゆる動物たちの血液と比較しても栄養価が非常に高くて美味いために、大昔から吸血鬼たちの食文化の中心であり続けている。よって、必然的に吸血鬼たちは一番の獲物であるヒトの社会に吸血鬼である事を隠して溶け込み、時折人間を襲うことによって生存繁栄を続けてきた。
しかし、あまりにも人間社会と密接な暮らしを送っているせいか、つい獲物に情が移ってしまう吸血鬼も幾度と無く存在した。
この小さな少女の姿をした吸血鬼が短冊に託した願いもまた、長い歴史の中で繰り返されてきた事のひとつに過ぎない。
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