0人が本棚に入れています
本棚に追加
授業終わりのチャイムが鳴る。
それは彼女にとって、戦いの始まり。その合図だった。
「緋那(ひな)ァッ!!!!」
「ーーーーーッ!!」
一限目の終了を告げるチャイムと同時に教室後方の扉が乱暴に開かれる。
その大きな音と声に体がビクッと跳ねた。
扉の方へ目をやると、そこにいたのは銀髪を逆立てた目つきの悪い長身の男。筋肉質なのが制服の上からでもよく分かる。着崩した制服の襟の辺りに微かだけれど血みたいなものが付いている気がするのは見間違いだと思いたい。
男の登場で一瞬、教室に静けさが広がる。私も一体何事なのかと視線を外せなかった。
そんな中でガタンッと音を立てて、教室の真ん中辺りに座っていた一人の女子が立ち上がる。
椅子から立ち上がったところであまり目線が変わらないような小柄なその子は、席と席の間を器用にすり抜けて教室から飛び出して行った。
それはもう脱兎の如く。
「緋那ァッ!! 今日こそ俺と付き合いやがれえぇえっ!!」
その女子を追いかけて、銀髪男子もものすごい勢いで姿を消した。
まるで嵐みたいな光景だった。
最初のコメントを投稿しよう!