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-----志狼緋那は追い詰められていた。
今日は何とか教室から飛び出す事は出来たが、休憩時間で廊下に出ている人を避けている内に中庭まで出てしまった。
中庭なんて大層な名前ほどの広さもないそこは、校舎から出るには一ヶ所しかない。つまり戻る所も一ヶ所しかない。
「あっ…」
無我夢中で走って校舎の壁に突き当たった緋那はおそるおそる振り返ると、そこには恐ろしい目つきで見下ろす兎叶銀次がいた。
「と…と、とと兎叶、くんっ…」
「相変わらず速ぇな、緋那。だが今日こそは逃さねぇ」
「こ、こわ、怖いよっ…」
銀次の剣幕に緋那の目元にはじんわりと涙が浮かぶ。
一体自分は彼に何をしてしまったのか。この数ヶ月、ずっとこうして追いかけられている。
「緋那…」
「っ…」
銀次の瞳がギラリと光ったかと思うと、緋那に向かってその大きな手を伸ばしてきた。
緋那はひゅっと息を呑む。
「俺と」
「ひぃっ…」
力強い掌が緋那の細い肩に触れる。
目の前の銀次の鋭い眼差しと掴まれた肩への圧力(物理的にも精神的にも)。それらが緋那をパニックに陥らせた。
ぐるぐると混乱する思考で、緋那は銀次の袖を掴む。
「付き合ってくッ…!!??」
そこからは、一瞬だった。
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