序 ウサギとオオカミ

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掴んだ袖を強く引きながら大きく足を踏み出し、反対の手で銀次の胸ぐらを掴みあげる。後は巻き込む様にして銀次の巨体を持ち上げたかと思うと、背中から地面に叩きつけた。 その小さな体からは想像もつかない程、華麗な背負い投げを決めてみせたのだった。 投げられた銀次も鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。 投げた緋那は更に涙を滲ませ、地面に転がった銀次をそのままに再び逃走した。 豆鉄砲を食らったのは私もだった。 「いやあ。志狼さん、くっそ強いんだわ」 「ぅえ、えっ? ええぇえっ!?」 今見た光景が全く信じられない。 見た感じの身長差で四十センチくらいはありそうなのに、まさか志狼さん“が”兎叶くん“を”投げ飛ばすなんて思ってもみなかった。 「なんか、柔道の有段者らしいんだよね」 「兎叶が志狼さんに一目惚れしたのだって、路地裏で他校生と喧嘩してたら建物の窓から飛び降りて来た志狼さんが相手の顔を踏みつけて着地したのを目の前で見たのがきっかけって話だし」 「色々ツッコミたくなるね!?」 そもそも建物の窓から飛び降りて来るってどんな状況? よく無事だったね。相手生きてる? それで一目惚れっていう兎叶くんも凄いな。
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