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-----校舎に囲まれた中庭はそれなりに日当たりが良い。
日当たりが良いという事は空がよく見えるということだ。兎叶銀次はそれを実感していた。
中庭に仰向けで転がって青い空を見ていると、今日は天気が良いなんてことにも今更気付く。自らの意思で転がったわけではないが、この景色はなかなか悪くない。
まさか今日は背負い投げで来るとは。
相変わらずあの小さな体のどこにそんなパワーがあるのか気になってしまう。
昨日は足払いで転かされて、その前は確か人の腕を踏み台にして肩上を飛び越えて逃げて行った。
全然捕まえられない。いっそ野生の動物にすら思えてきた。
だけど彼女が女なのだと銀次は知っていた。
それに、決して傷付けようと攻撃をしてくるのではない。自らを守っているのだと分かっている。
だからこそ見た目とは裏腹なその強さに惚れているのだ。
もっと彼女と話したい。彼女に触れてみたい。
今日は肩に触れたが思った以上に細くて小さかった。
あの強さの正体が知りたい。
つまりはこういうことだ。
「-----好きだっ!!」
寝転がったまま、ぐっと拳を握って高らかに叫ぶ。
とりあえず一限目は失敗したので、次はもう少し頭を使おう。
そしてようやく体を起こし、二限目が終わるまでどこかで時間を潰そうと銀次は中庭を後にするのだった。
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