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『なん。。だ、これは。。。』
数人の刑事達と共にいくつかの防犯カメラを確認していた斉藤は絶句した。
カメラの映像には、自宅方向から走ってくる男の姿が映しだされていた。
何かから逃げているのか、しきりに後ろを振り返っている。
よほど焦っているのだろう。何度目かに振り返った時、足がもつれて男は倒れこんだ。
転んだままで振り返ると、尻もちをついた格好で後ずさっている。
すると、男の反対側、画面右下あたりから、黒いモヤのようなものが二つ現れた。
アスファルト付近に現れたその二つの黒いモヤは、ゆっくりと不規則に、しかし確実に男に近づいていく。
男は何かを払いのけるような仕草を繰り返している。
ついにモヤが男にたどり着き、覆いかぶさるような状態になった__その瞬間。
男の両腕が、不自然な方向にねじ曲がり始めた。
男は絶叫しているのか、バタバタとのたうち回っている。
なおも腕はギリギリと回転を続け、ねじ切れてしまった。
男はゴロゴロと転げまわっている。
しかし無情にも、次は両足がねじ曲がり始める。
男の周りは、次第に黒く染まっていく。
おそらく、男のちぎれた腕のあたりから流れ出ている血液だろう。
両足の自由を奪われ、のたうち回ることさえ許されなくなった男の体は反り返り、ビクビクと痙攣しているようだ。
ついに両足が太ももの付け根から千切れ、その部分から大量の黒い液体のようなものが噴き出した。
斉藤も、他の刑事達も、言葉を発する事ができず、口を押さえたりしている。
その場に嘔吐してしまう者もいた。
両手両足を失い、痙攣をしている男。
無残に散らばった手足。
黒いモヤは、なおも男に襲いかかる。
男の腹のあたりから、体がねじれ始めた。
もう、見るに耐えない。
斉藤は無言で映像を切った━━━。
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