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たーいくつな入学式を終えて、神山八穂の気分は浮いていた。
「ここが新しいマイホーム……夢が広がりんぐだよ!」
八穂は大学から少し離れた安アパートの扉を前に、周囲への配慮もなしに声を上げた。
彼女のテンションが高い理由は、今日という日がめでたい日、待ちに待った一人暮らしの初日だからであった。
「下見には来たけど、なんかドキドキするなぁ……さぁてご開帳っと」
若干立て付けの悪い鉄扉のギィっとした音をバックグラウンドに、八穂の視界に部屋の様子がはっきりと映る。
「おぉ、ちゃんと家具家電付きだ! ちょっと見た目はボロいけどお財布に優しいし、いい感じ……っておろ?」
八穂は、小さい体を乗り出すようにして部屋を覗き込むと眉を顰めた。
「いるわね」
もちろん部屋に人はいない。
傍目から見れば八穂は宙に語りかけるだけのように見えるが……実のところはそうではない。
そう、常人には見えないものが神山八穂には見えるのだ。
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