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この悪臭、肉が腐ったすえた臭いと、水が腐ったヘドロの臭いと、ドリアンが腐った悪魔の臭いを、全部足した臭いよりも臭い、と思う、死の臭いだ、オレは一歩、また一歩とその女子から退いた、そうだ、この悪臭の元凶は、この女だ。
「あれ?」
「あー、府中君」
「ハイッ」
国分先生がその悪臭女の後ろを指差して名前を告げると、元気いっぱい返事を返した、まるでこの異臭騒ぎに気づかずに。
「いいから席に着いて下さい」
教室の一番後ろの窓際に女は向かった、一番隅の席だ。
「あー、おはよう諸君、端的に言うと転校生です」
オレはふらつく体を気合いで起こし、鼻を左手で抑え、右手にチョークを取った、なるべく口のみで息を吸う、黒板に名前を書きなぐる。
「あ、浅井、、優希、です、ぐはっ」
臭っせ~、油断すると、意識を持っていかれそうだ、思うに、クラス全員のマスクもコレのせいか。
「しゅ、趣味は、、、プファッ、ハア、ハア、全般的に、う、運動」
が、頑張れオレ、転入初日からヘタレの烙印を押されたいのか。
「こ、この髪の毛はじ、じ、地毛なので、プッ、ふ、不良じゃ、ないですよ」
ガクンと膝が落ちて、床に着きそうになるがこらえた、よ、よし、なんとか耐えたぞ。
「はい、じゃあ、浅井君はあそこの席を使って下さい」
先生の指差した場所、それは。
「はーい、ここ、ここ」
あの女の隣だった。
オレは意識が遠のいた。
「だ、大丈夫か、浅井君」
「ほ、保健室に」
薄れゆく視界の中、心配そうな目をしてオレを伺う、日焼けした顔を見た。
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