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目覚めると、まだ少し頭がズキズキしたが、オレは生きている。
ここが保健室である事は、ベッド、白いカーテン、薬品棚を見て分かった、それと白衣を着た若い女性、校医さんだろうか。
「目覚めたかい、君は貧血だか酸欠だかで倒れたんだよ、覚えてる?」
覗きこまれると、サラサラの髪の毛がハラリと落ちて良い匂いが漂った。
「はい、とても、酷い臭いでした」
今も鼻孔の奥に残る、あの悪臭を、大人の香が拭い去ってくれる、ありがたい。
それにしても、あのドリアン女、いや、あの教室はあれで良いのか、てか、転入早々にぶっ倒れるとは、きっと軟弱者のレッテルを貼られてしまったな。
「もう、大丈夫のようだな、私は化学、物理、担任の仁科だ、君は、なんだ、2-Bに不良少年がいるとは聞いてないが、フフフ」
挑発的に微笑んで、先生はオレの額に手のひらをあてた、良い匂いと柔らかい手の温もりに、どうしても照れてしまう。
「か、化学の先生?」
「ああ、熱も無いなら、教室に戻るように、因みにここは化学準備室だよ」
「え、保健室じゃないんだ、なんでですか」
「ああ、国分先生がな、連れて来てくれたのだが」
なんだか、歯切れの悪い応えが少し気になった。
「あの、生徒にとても臭い人がいるのですが」
「!」
ここに連れられてきた経緯を述べたいだけなのだが、いや苦情と言った方がいいだろうか、その言葉を、あからさまに無視して、沈黙が訪れた。
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