クワフル少女

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「そんなスーパーお嬢様の府中さんが去年この養老川高校に入学してきたのだ、この学校の方針は学生の主体性を尊重し、社会に通じる個性を育てる、との事なのだが、孫の自立力を高めたいとお婆様がここを選んだそうだ。 府中香は、容姿端麗、才色兼備、入学テストは断トツ一位、その上大地主のお孫さん、当然、特待生以上の特別扱いに、優待遇、もはや接待!?、そりゃあもう学校上げての大歓迎ぶりだったよ」 なるほどね、それで彼女には、臭かろが遅刻だろうが何も言えない、と言うわけか。 「で、あの臭いは、原因は分かっていますか」 先生は首を振ってから応えた。 「残念ながら臭いの原因は不明。 それどころか、どういう訳か、成績も入学当初から下降の一方、遅刻、欠学も日に日に多くなっていった、大きい声では言えないが、今ではただの落ちこぼれだよ、そしてそれが、この学校の全教員達の最大の悩みの種になったのだよ」 言うに言えない、大人の事情ってところかな。 「触らぬ神に祟り無し、ってやつですか」 ちょっと意地悪にオレが言うと、言い難そうに先生は応えた。 「良いも悪いも学校の方針、この手の生徒の問題に口は出せないって事だよ」 更に腕を組み、鼻息一つ、荒げた言葉を続けた。 「彼女の立場的に本当の友達という存在が少ない、ある意味孤立しているとも言える、今こそ真の友情、なんでも言い合える友達が必要なのだが」 そう言ってオレの目を真っ直ぐ見つめた。
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