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視線が痛い。
向けられ馴れた好奇の目も、一度に向けられては息苦しくて仕方がない。それだけに、膝をつき顔を伏せていても、咎められない状況というのが救いにも感じられた。
「銀の騎士、ユーリイ=レンオアム卿! 王名により本日付けで『封印の聖女』の守護騎士(シュバリエ)に任命する! いかなる理由があれども、異論は受け付けぬ」
「イエス、ユア マジェスティ」
胸に手を当ててそう答えはしたが、気が重い。
朝議を行っていた広間に広がる抗議の声。元老院側からも衆議院側からも聞こえてくる。その場に居合わせた騎士達にも動揺が広がる。
「なりません、陛下! 卑しき魔族の疑いのある者を神聖なる巫女の傍に置くなど断じてなりませんぞ! この者、何をしでかすか判ったものではございません」
ユーリイは声の主を睨み付けると国王の御前にも拘らず、その許しを得ることもなく立ち上がった。怒りに、蒼穹を映した瞳が揺れる。
「やめぬか!」
その一言に、その場は一瞬で凍り付く。ユーリイも怒りをおさめ、膝をついた。
「此度の決定に意見を申すは、世への反逆とみなす。レンオアム卿、御前も例外ではない。見苦しいところを見せるのであれば、下がっておれ」
「申し訳ありません。頭を、冷やしてきます」
一礼。彼は王の言葉に従って広間の外へと出た。
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