氷の騎士と封印の聖女

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 永遠に続く大地・アラゴン。  その広大な世界を一つの国として統べる者達がいた。それが『人間』だ。目立った争いもなく平和な時が過ぎていったが、突如として異界より竜族と魔族が境界を越えて侵攻してきた。 だが、竜族も魔族も魔力を持つが故に人間達を侮り、彼らの数と『科学』の力を前に大敗を期し、その後に、竜族の殆どが封印された。その魔力が山を持ち上げて、アラゴンの空に浮遊島を生み出したのだと伝え聞いている。  竜族は傲慢で高慢。  魔族は卑劣で醜悪。  人間こそがもっとも優れた種族であり、劣等な彼ら侵略者は滅んで当然。差別の対象であり、迫害されても当たり前のこと。そんな魔力を尽く排斥しようとする思想の渦巻く世に、人でありながら魔力を持って生まれてしまった者がいた。 それが、ユーリイ=レンオアムである。  彼自身、生まれは真っ当な人間。両親、一族共に魔族の血など一滴として混ざってはいない。それを証明しようとしたが、国に聞き入れてはもらえず、彼の両親も祖父母も叔父も叔母も、従兄弟も皆、異端審問にかけられて半ば晒されるようにして処刑された。  しかし、事の発端。真に異端であるはずのユーリイだけは、生き残った。子を亡くしたばかりだった国王には、どうしても、赤子を殺すことができなかったのだ。  そうして生きながらえた彼は、城で『真っ当な人間』となるようにと育てられ、今では騎士として国と王に仕えている。そして、つい今し方、竜族の長である竜侯(りゅうこう)の封印を守る聖女の守護騎士に任命されたわけだ。
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