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「とっくに処女を手放した女に、聖女だなんて勿体ないわ、お優しい竜騎士さん」
確かに。躊躇いも、恥ずかしげもなく、そんな事を男に平気で言ってしまう彼女に聖女だなんて言葉は似合わない。
「ふふ。正直なのね、竜騎士さんは」
「その……竜騎士というのは侮辱ととってよろしいのか」
「そんなのイヤだわ。私は貴方が竜侯にそっくりなものだから、敬意と親しみを込めて『竜騎士さん』と呼んでいるのよ」
何が敬意と親しみだ。竜侯に似ているなど、異端のユーリイにとって差別され、侮辱されているのと大差がない。その呼び方は、そんな言葉とは結び付かなかった。
「私は封印の聖女の守護騎士だ」
「本当に、そうかしら」
「何が言いたい…………?」
聖女は何も言わない。その代わりユーリイの手を引いて、どんどんと下へと降りてゆく。先程とは違い、ゆっくりと導くように。
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