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はじまり
くらい土の中で、何かがうごいている。その生きものは、セミのよう虫だった。もうすぐ、あこがれの光のせかいに出られるのだ。
やっと土の中から出ると、あたりはまだくらかった。でも、休んではいられない。大きな木にしがみつき、上にむかって、のぼっていった。
まん中までくると、セミはうごけなくなる。そこで今までの、かたいふくをぬぎすててしまった。白くやわらかな、はねをのばし、生まれかわったセミは、とてもきれいだ。
おひさまがのぼるころには、すっかりはねも茶色になり、生まれてはじめて空をとんでみた。そして明るくなったせかいを、たっぷりと楽しんだ。
あとから妹ゼミが、土の中からどろだらけで、はいだしてきた。ずいぶんゆっくりしているなと、しんぱいになってしまったが、すぐにはねのはえたセミへと生まれかわった。大きくて、りっぱな体である。
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