0人が本棚に入れています
本棚に追加
月曜日
とにかくとび回ってみた。森の中は、うすぐらく、友だちゼミのなきごえが、あちこちから聞こえてくる。まけずにないてみた。
外は思っていたより広く、セミの小さな目では、とらえきれるものではなかった。きらくなセミには、くらい土の中のほうが、おちついてくらしていけた気がする。もう土がこいしくなってしまったのかと、少しあきれてしまったが、もうもどりたくはない。
休んでいると、見たこともない虫が、近よってきた。細ながく、うすいはねをもつトンボだった。
「こんにちはセミさん。いいお天気だったので、海のほうまでとんでいったよ。きみは海というものを知っているかい?」
「知らないな。それはどんなところなんだい」
「大きな水たまりなんだが、青くてきれいで、とにかくでっかくて、すばらしいところなんだ」
「ほう、それはぜひ行ってみたいな。どこにあるんだい?」
「山をふたつぐらいこえたむこうさ。でもいいのかい? セミさんは、歌うのにいそがしいはずだよ」
セミはしばらく考えてしまった。気がつくとトンボはもういなくなっていた。
最初のコメントを投稿しよう!