水曜日

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水曜日  きょうは雨だった。セミは、まだ生まれた森からは出られずにいた。虫たちが、木のはのうらで雨やどりをしている。チョウたちは、しずくにたたきおとされまいと、かげにかくれている。楽しげにとんでいる時のたたずまいは、しぼんでしまい、今はおちばのようでもある。セミのはねは、やわらかではなかったが、雨にぬれると、まちがいなく地めんにおちるだろう。  ひたすら雨がやむのをまったが、かげからキリギリスが歌いはじめた。セミとはまた、ちがう歌だったが、雨の日の気分をまぎらわせてくれる、いい歌だと思った。  するとこんどは、太ったヒキガエルが、すがたをあらわした。土色で、のそのそとしたうごきだったが、木の上からはよく見えた。 ほんのひとときだった。ヒキガエルはとくいのジャンプでキリギリスをとらえ、すぐにはらにおさめてしまった。 けっきょく、雨は一日やまず、セミは生まれた森からは出られずに、むなしくすごした。 カタツムリだけがうれしそうに、みどりの草のはっぱの上を、のっそりうごいている。みょうに体がなめらかで、雨にぬれると、つやつやしていた。まるでうごく石ころのようにも見えた。じぶんより、のんびりしたやつがいるのが分かって、少し気分が晴れた。
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