かくれんぼ

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 そして、その大人は全校生徒と先生たちではない。全校生徒と先生は亜由美を除いて全員体育館にいたんだ。つまり、学校側では有り得そうな人だと、用務員のおじさんの場合と、学校へ侵入した人の可能性がある。いずれにしても、窓から飛び降りると最短の時間で放送室から姿を消すことができるし、勿論階段を使ってもいいのだけれど、それだと先生たちに鉢合わせする場合がある。あれ? 階段は学校の西側と東側にあって、当然、先生たちは体育館よりの西の階段を使ったのだろうから、犯人が東の階段から降りる場合もあるか。いずれにしても、それだと用務員のおじさんはあり得る。用務員室は学校の体育館側の反対にあって、それに、放送室の窓の下の花壇は用務員のおじさんと少数の生徒が世話をしている。  後は学校へと侵入した大人の可能性がある。  明日学校へ行ったら花壇を確認してみよう。  足跡があれば学校へと侵入した人の可能性があるし、用務員のおじさんなら足跡を残すことはしないはず。  犯人は大人で放送室でチャイムを鳴らし、人形の手を置いた。人形の手を置いた意味は何かの警告か、それとも、これから何か起きるという意味。あ、同じかな?でも、最悪の場合はその警告は僕に向けているかも知れないということだ。  ここまできて、僕は恐怖はしない。  何故なら向こうを先に見つけて僕が警察の人どころか、みんなに知らせるからだ。  次の日から登下校がしにくくなった。  登校の時だけは、通行人や自動車の多い時間帯なので、いつも通りに通学路にPTAのおばさんたちがいるけれど、下校は毎日というわけじゃないけど保護者の迎えを待つことにしたみたいだ。  保護者が迎えにこれない場合は、通学路をおばさんたちが緊張して見張っていた。  みんな未だに隣町の児童たちが帰りのバスからいなくなったことを気にしている。  警察の調べでは、送迎バスの出発の時間から15分後の2時20分には、児童たちはバスにいたのだそうだ。交差点を曲がるバスを商店街で働いている人達が見ている。  その後、15分の空白があって、その間に児童たちと保母さんとバスの運転手が普通の道路を走行中に忽然と消えたのだそうだ。  僕は亜由美と汗をかいて、居酒屋で藤堂君と篠原君を待っていた。学校へと登校する時間だ。昨日の夜は僕は少しだけ怖くなって布団の中に籠っていた。
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