かくれんぼ

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 後ろの子は天野さんという女子で、校内のマラソン大会で4位を記録していた。 「知らないわ。私が教室に入ったときには置いてあったの」  天野さんは色とりどりの折り紙を広げていた。 「それじゃあ、一番この教室へ早くに入った子に聞けばいいのかな?」 「それなら戸田さんよ」  僕は窓際の藤堂君の後ろの席の女の子に聞きに歩いていった。  戸田さんだ。 「僕の机に白いハンカチが置いてあったけれど、誰が置いたか見ていたら教えて?」  僕は白いハンカチを持っていた。窓の外にはカラカラの空に白い雲が泳いでいた。何気にその子を観察した。クラスで以外と有名な子で、父親が大企業の副社長なのだそうだ。 「母を求めて3000里」を読んでいた。大きな瞳を細めて僕の顔を見てはひそひそ声で、 「わからないわ」  そう一言話すと、視線を本へと戻した。まったく興味を持っていなかったようだ。何か知っていたとしても嘘は言わなそうだ。僕は考えた。  この教室の子たちじゃない。  何故かというと、一連の犯人たちか犯人のせいだからだ。  学校の関係者か、それともそうではないかは正直解らない。  いずれにしても、亜由美に聞かなきゃいけない。花壇に落ちてきた人物を。  その人物が犯人だ。  昼休みに僕は亜由美のいる4年3組に来た。  教室は本を読んでいる亜由美以外は騒がしかった。僕は亜由美の机のところまで行くと、勢いよく話し掛けた。 「亜由美。お願いがあるんだけど。昨日の体育館にみんなが集まった時に、花壇に落ちてきた人って誰?」  亜由美はA4ノートを勢いよく引っ張り出し、迷惑そうに走り書きをし、すぐに本に目線を戻した。  僕はA4ノートを恐る恐る除くと。 「羽良野先生」  と書いてあった。 「え?」  僕はまた叫びたい気持ちを抑えた。  目が白黒したけど、目の前の亜由美は一人読書に没頭していた。 「それ、本当なの?」  亜由美は迷惑そうな顔を上げて、こっくりと頷いた。  一体どういう事なのだろう?  確かに羽良野先生は体育館から他の先生たちと、放送室へと走って行ったはず。  そして、普通に戻ってきた。  羽良野先生が犯人?  そんなはずはないはずだ。  だって、裏の畑には近寄っていないはずだし。  僕が考えていると、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。
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