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例えば洗い場にあるくず入れに入れてしまったり、最後は口に含んで後で自分の部屋で捨てたり。おじいちゃんには気が付かれてしまいそうで、怖かった。
自動販売機の日陰で待っていると、藤堂君と篠原君が走って来た。
僕たちは学校へと向かった。
生暖かい南風を受けてスクールゾーンと書かれた道路を歩いていると、パトカーが数台走り過ぎていった。
学校の方だ。
何か起きたのかな?
僕は嫌な気持ちを隠して、汗を拭いていると、亜由美が僕のほうへ振り返ってA4ノートを引っ張り出した。
サラサラと大人並の綺麗な字で書いて、ぼくに渡した。
(学校に入って行った)
と書かれてあった。
亜由美はすごく目がいい。ここから、一キロ先の薄暗い学校の校門にパトカーが入ったことを見ていたみたいだ。
(校門の傍には大原先生と校長先生たちがいるわ)
亜由美はすぐに校舎に入ったパトカーへの興味をなくして、黙々と歩いて行った。
亜由美には怖いものがないのだろうか?
ぼくがそう考えていると、藤堂君と篠原君も気が付いたようだ。
「学校にパトカーが入ったよ」
藤堂君が深海魚のように呟いた。
「本当だ」
篠原君は額の汗を拭っていたが、その顔は少しだけ陰りのある顔だった。
二人とも何か事件が起きたというより、嫌なことが起きたと考えているのだろう。ぼくは一連の事件が関係していると踏んだ。
校門に着くと、子供たちが回れ右して帰っている。
校長先生と大原先生。胸元のホイッスルを子供たちが帰るようにと、急かすようにリズムカルに吹いている真壁先生がいた。置田先生は時折手で赤くなった目元を隠した素振りをしている。
篠原君も藤堂君も震え上がる。
「何か起きたんですか?」
ぼくは涼しい顔と子供の顔を張り付けて、羽良野先生に聞いた。
「なんでもないです。今日は警察の人たちに学校を調べてもらっているから。悪いけど今日は全校生徒は自宅で待機。すぐに帰りなさい」
羽良野先生は口調はいつも通りだが青い顔をしていた。
亜由美は校門から昇降口の方をしばらく見つめていた。
藤堂君と篠原君は震え上がって、口も聞けないで回れ右して帰る。僕はすぐに作戦を考えた。何故って、一連の事件に関係しているのなら、ぼくが知らないと後で大変だ。
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