異様

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 ベットから起きて、反対方向に向いたタオルケットを直すと、一階へと降りて行った。まだ、誰も起きていない。  玄関の郵便受けから今日の新聞を取出し、キッチンで広げた。  何ページか読んでいると、昨日の学校での事件の見出しがあった。  そこには、こう書かれていた。    昨日。午前8時頃。H県。御三増町の稲荷山小学校で、用務員の松田 順平さん(38歳)が用務員室で何者かに殺害されていた模様。  松田さんは刃物で数十回刺され、頭部と右手のない遺体で発見された。午前8時10分頃に教師の通報で駆け付けた警察によると、死後。15分間。体が痙攣のために動いていたとのこと。  H県御三増警察暑は殺人事件と断定。  警察は……。    二階から母さんが降りてくる音を聞いた僕は、素早くヤカンを取出しお湯を沸かした。 「あら、今日も早いわね。関心関心。でも、学校には行っちゃ駄目よ」  丸っこい母さんはすぐに、朝食の準備に取り掛かる。  今日は丁度、日曜日だ。  これからは、自分の身を守るために調査をしていかないといけない。  まずは、隣町で起きた幼稚園バスの事件を調べよう。 「母さん。裏の畑でも遊べないから、ちょっと熊笹商店街に篠原君と藤堂君と行ってくるよ。いくらかお小遣いがほしいんだ。あそこなら人が多いし大丈夫だよね」 「解ったわ。あそこなら人が多いし、大丈夫でしょうね。でも、母さん心配だわ。気を付けてね」  母さんはサバを焼きながら、ぼくに真面目な顔を向ける。  いつも母さんは料理の時は一生懸命だ。  でも、その時の顔とは全然違う顔をしている。  ぼくは涼しい顔で頷くと、隣町まで行ける往復分の電車賃を貰った。    ぼくは水筒が入ったリュックを持って御三増駅へと歩く。  日差しが今日は幾ばくか柔らかい。  生暖かい風もあまり吹いていなかった  水筒の中には麦茶が入ってある。後、昼食の大きなビスケットが三枚とおにぎりが一個。  こじんまりとした家屋を見ながら、歩いているとどうしても自分が裏の畑の子供たちを助けるためには凄い勇気があることをしているんだなと思える。  でも、ぼくは半分くらいは空想と恐怖と胸騒ぎから動いているのかも知れない。  それは、決して褒められた行為じゃないのかも知れないけれど、誰も信じてくれないし、自分の身を守るためなんだとしたら、誰もぼくを責められないはず。
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