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階下から母さんの呼ぶ声が聞こえた。
時計を見ると午後の3時だ。
亜由美は一日中部屋にこもっていた。
ぼくはリュックを持って、キッチンへ向かった。
「そのリュックどうするの?」
丸っこい母さんはお茶の準備をしながら聞いてきた。
「なんでもないよ。羽良野先生が帰ったら藤堂君と篠原君と遊ぶんだ」
玄関のチャイムが鳴って、母さんが出迎えた。羽良野先生は玄関越しにしゃちほこばって挨拶した。
「歩君。ちゃんと勉強してる? 学校ないからって遊び過ぎないでね」
優しい声色で、羽良野先生がニッコリと聞いてきたが、ぼくも涼しい顔で頷いた。
「さっさ、上がって下さいな。大原先生。お茶を今配りますね」
「あっと、お構いなく」
羽良野先生はぼくの案内で、リビングへ行くと、一変して恐ろしい形相でギロッとぼくを睨んだ。
ぼくは心臓がバクバクしたけど、涼しい顔でニッコリと笑顔を返した。
母さんが盆を持ってきた。
「歩君は頭が良いんで、私は教師として安心しています」
羽良野先生は控えめだが、丁寧に頭を下げて静かに言った。
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