裏の畑

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 当然、おじいちゃんと何度戦っても将棋では幸助おじさんは敵わない。  僕はそれを聞いて、急いで二階の一番奥。この家で一番陽の当たる部屋。僕の部屋へと向かった。考えを整理するためだ。  掃除をしてないけど、いつも小奇麗にしている部屋だ。  机の教科書を整理して、あまり動かさないようにして、ベットの毛布も寝相が悪いから毎日朝起きたらちゃんと整えている。  床の埃は目に見えるものだけ、いつも海のポスターが貼られたゴミ箱に捨てていた。  朝になると、ちょうど顔を強く照らされる位置にあるベットに座って、僕は頭にあることを少し整理してみた。  人間って、バラバラにされても死なないのはあり得ないはずだ。  よくテレビでバラバラ殺人事件が報道されているけど、当然殺されてからバラバラにされているのは僕にも解るんだ。  では、殺される前にバラバラにされても生きていることができるのだろうか。  いや、違うはず。  昔、おじいちゃんが言っていたんだ。  人は心臓と魂が一番大切で、心臓から手足や頭が取れると人は死んでしまう。酸素や血液が通わなくなって、魂が死んでしまう。  そう言っていた。  では、何故あの子供たちは死んでいなかったのだろうか?  バラバラにされても見えない管で酸素や血液が通っているからだろうか?  でも、切断面は赤黒くなっていて僕にも管のようなものはなかったのが解る。  警察の人にこんなことを話してもいいのだろうか?  警察の人はきっと、バラバラ生き事件で捜査をするのだろうか? 「歩(あゆむ)―! ごはんだよー!」  しばらくすると、僕は一通り考えていたけど、一階へと降りていくおじいちゃんの声が聞こえたので考えるのを中断した。  幸助おじさんは「いえ、結構。結構」といつものように、玄関で今度こそはと思っている母さんとまるで機械のように話している。幸助おじさんは夜道を夕食は自分の家で食べると言って帰って行った。  おじいちゃんの胃袋は頑健だ。  角が多い父さんと丸っこい母さんと妹の亜由美が座る食卓の隅に、いつもどっしりと座っているのだけど、この家族の中で一番食べるのがおじいちゃんだった。  今日も母さんの作った油多めの酢豚と塩と胡椒で味付けされた野菜炒め。大根と豆腐の味噌汁。ご飯とナスの漬物をゆうに三人前は食べていた。
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