限りなく近い0(ゼロ)

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「その、紙袋に入ってる、雑誌見せてくれ、」 涼香は、雑誌を紙袋ごと男に渡した。 男は、カウンターの下から、警察官が持っているような真っ白い手袋をはめて、袋の中の雑誌をゆっくりと取り出した。 「こ、これは、間違いない、昭和48年、『ヤングボーイ』の五周年記念号の付録つき雑誌!」 俊介「それ、そんなに貴重なんですか、」 「五周年の付録は、当時大ヒットした作品「魔風少年ナーロ」の紙人形なんです。もちろん、当時の少年達は切り抜いて遊んだことでしょう。だから台紙のまま残っているのは極めて貴重なんです!」 俊介「そうなんですか、それで、どのくらい価値があります?」 「お、恐ろしい!こんな貴重なものに値段を付けられません!でも、私だったら、これくらい出します!」 男は人差し指を一本、上にあげた。 俊介「すげーっ!雑誌に一万!」 「とんでもない!百万、百万出しますよ!」 涼香「うぇぇー!!」 「とにかく、これは私の「先生」に鑑定してもらいます。今、電話して呼びますから、他にもありますか?」 涼香はあたふたしながらも、両手に持っている紙袋をカウンターにのせていった。 俊介「すげえ、じゃ、俺も他の店に行ってみるわ、」 俺は足を絡ませながら店の外に出た。 外には、台車にダンボールを乗せた親父が目っていた。 利治「どうだった?」 俊介「やばい、大当たり、」 利治「本当か!よし、手分けして店を当たってみよう!」 俺と親父はしらみつぶしに店に入っていった。 俺はフィギュア専門の店を回った。またしてもヒット、大谷が行っていた『魔法使いキューティー』のフィギュア、鑑定どおり五万円で売れた。 親父の方も大変だったらしい、最初は台車を邪魔物扱いされていたけど、巡っていくうちに、中身をかぎつけたマニアがドンドン後をつけてきたとか。だから最終的には施設の警備員が数名付いていたとか。 店という店を巡り、直哉のコレクションは万札に変わっていった。まさか、こんなことになるなんて、物の価値なんて、解らないものだ。 コレクションを売り出して何日か経った。直哉の部屋は、木の棚以外は何も無くなった。 俺達三人は、このがらんどうになった直哉の部屋の真ん中に座り、それぞれの戦利金を発表した。 俊介「俺、120万円」 利治「父さん、80万円」 合計、二百万、テーブルに置いた札束を見て、涼香の顔が強張った。
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