限りなく近い0(ゼロ)

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なんだ、あの雑誌、まさか価値がなかったとか・・・ しかし、涼香の顔はすぐにほころんでいった。 涼香「私、250万!」 利治「本当か!」 俊介「マジかよ!スゲエじゃん!」 涼香「やっぱり、あの『ヤングボーイ』が価値あったのよ、五周年号も70万で売れた!」 皆、思わず顔がほころんだ、直哉の部屋で喜ぶのは少し気が引けたけど。 利治「あと、50万か、さて何を売ろう?」 俺と涼香は、顔を凍らせた。 涼香「父さん、もう、売れるものは無いよ・・」 利治「え?まさか、まだあるだろう、あれだけあったんだから・・・」 俊介「もう全部売ったよ、押入れも空だぞ・・」 涼香は、押入れの襖を開けた。中は見事に何も無く、奥の壁板が綺麗に見えていた。 利治「おい、どうしよう、」 俊介「親父が持ってたのは?全部売ったのかよ?」 利治「もう、全部売ったよ、ミニカーが意外と高かった、」 俊介「でも、三人のなかで一番金額低いじゃん、ちょっとは値切ったのかよ?」 利治「あ!」 親父は急いで部屋から飛び出し、すぐさま戻ってきた。 利治「これ、これが残ってた!」 あのフィギュアだ・・・ 直哉が初めて買ってもらった、『カイセンジャー』の「シェル」。 俊介「俺、ちょっと大谷に電話してみるよ、」 俺は急いで携帯を取り出し、大谷の番号を掛けた。 確か、店では一体20万くらいで売れた。 でもこの水族館カラー、微妙だなあ。 俊介「もしもし、おお、俺だよ、あのさあ、『カイセンジャー』の「シェル」いたじゃん、あれの水族館とコラボしてた時あったでしょ?それって今どのくらいの・・・マジで!」 親父と涼香は、俺を覗き込んだ。 俊介「ありがとう、じゃあまたな、」 おれは電話を切った。 俊介「これってさ、やっぱり全然人気無かったんだって、」 親父の顔がうな垂れた。 俊介「それで、すぐに販売を中止したらしい、だから、すげえ、貴重なんだって、」 親父の顔が上がった。 利治「そ、それで、今いくら?」 俺は、満面の笑みを浮かべた。 俊介「ただいまのお値段、50万円也!!」 俺と親父は興奮して思わず立ちあがった、お互いの両手を掴んで、飛び跳ねた。 けど、涼香は違った、座り込んだまま、ずっと「シェル」を見ている。
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