限りなく近い0(ゼロ)

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俊介「どうした、涼香、」 涼香「これさあ、本当に売るの?」 利治「売るさ、なんで?」 涼香「これさ、直哉が一番大切にしていた物なんじゃないの?」 俺と親父は、思わず手を離した。 俊介「で、でもこれを売れば借金がゼロになる、これで解決できるんだぞ?」 涼香「でも、これを売ったら、二度と戻ってこないよ。お兄ちゃんがお金持ってたとして、これをまた買い戻す気ある?」 俊介「そ、それは」 涼香「これは、直哉の思い出も入ってるんだよ、もしこれを売ったら、直哉の思い出も売れてくんだよ・・・」 俺と親父はうな垂れた。 涼香「お金は、何をしてもお金だけど、物は何も変えられない。」 数日後、俺は銀行から金を借りることが出来た。 親父も何とか仕事を見つけ、掛け持ちでコンビニのバイトもしている。 涼香は学校に行ってるが、俺と親父のために毎朝ご飯と弁当を作ってくれている。 あの「シェル」は、今でも直哉の写真と共に玄関に飾っている。 俺は大谷の紹介でショップの販売に就くことが出来た。 これから頑張って仕事しないと、借金があるからな。 そして遊びもほどほどにお金を貯めないと。 限りなく近い、ゼロに向かって。
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